C城新鉄道 前ページへ 表紙へ

 機芸出版社刊『レイアウトテクニック』掲載の16番ゲージレイアウト。ただし、レイアウト製作記事はなく、ストラクチャーやシーナリィ、アクセサリィの製作記事のみです。その理由は『鉄道模型趣味』誌1972年3月号(通巻285号)に製作者の阿部敏幸氏からの手紙として、「10年前の典型的小レイアウト」「以来10年、考え方が変わっても、基本設計に関する部分まで直すことはできず…」等と説明されています。
 確かに線路が多く、配置も不自然ではありますが、それ以外の部分、特にストラクチャーとアクセサリィの素晴らしさは目を見張るものがあります。細密でなおかつスッキリと仕上げられている点も驚きですが、バランスの取れた設計は神業といえるでしょう。
 シーナリィも細部はなかなかで、特に雑草の多様な表現は感心させられます。
 40数年も前の作品とは思えない、密度の濃いレイアウトです。
 私の作品も、ご覧の通り城新鉄道の影響を大きく受けています。特に、設計段階におけるバランスと、細かい部分への気配り、丁寧な仕事の大切さを強く学びました。
 今の私はむろん、阿部氏には遠く及びませんし比較の対象にもなりませんが、目標と方向性は、やはり城新鉄道です。
 本作品は『鉄道模型趣味』誌1976年2月号(通巻332号)掲載の「廃線迫る旧レイアウトと、蘇った津軽/東野のディーゼル機」で廃線が予告され、その後解体されたそうです。
 
 レイアウトとしての城新鉄道は現存しませんが、幸いなことに今でもエコーモデル店内に、「バス車庫と火の見やぐら」「駅本屋」「ディーゼル給油所」の3つの部分がジオラマとして展示されています。車輌も、DC2とDC3、5号蒸機、キハ1、2軸客車3輌、ワフ2輌が展示中です。なお、以前は機関庫とその周辺や自作のボンネットバス、電動貨車デト1も展示されていました。
 また、店内には95年と97年に『鉄道模型趣味』誌で発表された、「第二次城新鉄道」の3ジオラマも展示中です。
 その後の作品をぜひ期待したいものですが、阿部氏によれば「作りたいが、忙しすぎて無理」とのこと。ファンとしては、エコーモデルの新製品を少々我慢しても、新作を期待したい気持ちです。

 左写真はTMS285号の表紙。
 三栗駅構内を中心に、駅前商店街の一部も写っている。手前は、5号蒸機。
 ストラクチャーとアクセサリィは全て自作。その細かさは、まさに驚異的。
 車輌も含めて、ウェザリングも素晴らしい。
 

       ※撮影と掲載の許可をいただいてあります。

 城新鉄道を代表する車輌が、左写真のDC2。
 津軽鉄道から東野鉄道に譲渡された2輌のDC20を1日かけて採寸し、精密な図面を起こして自作なさった作品です。製作期間は約1年とのこと。実物をきっちりと模型化し、実感的なウェザリングを施してあります。
 奥に写っているのはDC3。

 右の写真はDC2の反対側面。

 本作品は写真撮影後、社紋が追加されました。阿部氏によれば、「少しは進歩しなくちゃね〜」とのことです。

 城新鉄道三栗駅。
 1960年代に製作された作品で、側板はバルサを加工、窓枠はカラス口で描かれています。何もなかった時代に、すべて手作りで完成なさったものです。
 右写真は、初公開の駅本屋内部。机やベンチ、台秤や小荷物等、アクセサリィ類も自作です。内部照明も付いています。
 ボンネットバスと駅前車庫。1970年頃の作品です。
 どちらもフルスクラッチで、バスは製作に半年かかったそうです。
 タイヤ以外は使用できるパーツなどなく、バスは真鍮板を曲げて窓を抜いた労作。ボンネットのスリットもきちんと抜いてあるのは驚異。車内も細かく作られています。
 美しい塗装もさることながら、手書きのレタリングも緻密です。
 機芸出版社刊『レイアウトテクニック』に製作記事が掲載されていたので、私もバス車庫を作りました。14歳の時でしたが、丁寧な記事のおかげで無事完成し、今もレイアウト上に健在です。バスの自作は無理でしたけど。

 左写真はエコーモデル製品の見本ですが、単体ではなくジオラマになっているところはさすがです。見栄えが違いますよね。

 右写真は、1990年代に製作が始まった第二次城新鉄道の、倉庫とガラクタ置き場、トロリー置き場です。ガラクタ置き場はくりはら田園鉄道にあったもので、私も実物を見ているので懐かしい建物です。
 土や植物の自然な色合いや、石垣の実感的な表現も素晴らしいですね。

 第二次城新鉄道の、廃車体2体。
 左写真がワフで、右写真がガソリンカーです。
 いずれも細かくて、ウェザリングも効果的です。
 特に、ガソリンカーの車体の錆びているところは本物そっくりで、驚異です。写真では見えないと思いますが、室内も細かく作り込まれています。左手前の植木鉢や、右手前の散髪中の情景も表現力に富んでいます。すごいです。
 

 

 2009年2月に発売された『模型鉄道でよみがえる 昭和の鉄道と暮らし〜エコーモデル・その世界』(ネコ・パブリッシング刊)は、阿部氏の作品集と呼べる本です。前半にレイアウト城新鉄道の着工から解体に至るまでの経緯が説明され、多数の写真と詳細な解説も掲載されています。後半には車輌の写真や解説が続きます。この本を見ると城新鉄道がよく理解できます。
 ただ、レイアウト写真は部分的な物がほとんどで、全体像が掴みにくいかもしれません。過去にTMSへ掲載された写真も、全て部分的な物です。唯一、山崎喜陽著『鉄道模型』(保育社刊・絶版)に、全体を写したカラー写真が掲載されていて、これを見ると全体の配置がよくわかります。

 『模型鉄道でよみがえる 昭和の鉄道と暮らし〜エコーモデル・その世界』(ネコ・パブリッシング刊)の表紙。
 左の写真が機関区。右の写真が三栗駅前商店街。
 本文では、レイアウトや車輌の詳細な解説と、多数の写真が載っている。
 ちなみにP.110〜111には、私の作品も掲載。阿部氏の作品集に載せていただけるとは、感謝感激。
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