はまなす 前ページへ 実物鉄道へ

(24系25形+14系10連 青森 2013.12.26)

 JR線上から急行列車がほぼ消滅した後も、最後の定期急行として存続していたのが「はまなす」です。
 国鉄時代にはなく、青函トンネル開通と同時に登場した比較的新しい急行列車ですが、青森から札幌へ乗り換えなしで行ける夜行急行という利便性の高さから、2016年春まで生き残っていました。
 「北海道&東日本パス」でも乗車可能で、リーズナブルな旅ができました。
 所定編成は24系25形寝台車2輌に14系座席車5輌をつないだ7輌でしたが、多客時には増結し、最大で12輌編成となりました。
 14系のうち4号車は、青函連絡船にヒントを得たといわれる「カーペットカー」で、5号車と6号車は廃車となったグリーン車の座席を流用した「ドリームカー」と、バラエティに富んだ編成でした。
 寝台車は1号車と2号車ですが、増結車はその間に入り、21号車となるのも特徴的でした。 

(24系25形+14系12連 青森 2011.12.22)

(24系25形+14系10連 札幌 2013.12.25)

(DD51-1143 函館 2015.7.23)


 「はまなす」の 牽引機は、青森〜函館間がED79、函館〜札幌間はDD51でした。
 函館では、機回しを兼ねて牽引機が交代しました。
 この光景が見られるのも、深夜の函館駅が最後でした。

(24系25形+14系7連 函館 2015.7.23)



 「はまなす」の編成中、最も個性的な車輌はやはり4号車「カーペットカー」でしょう。
 扉の横には、「のびのびカーペット」とあります。
 車体は、通路側から見ると普通の14系座席車に見えますが、反対側は細長い小窓が並んだ不思議な外観です。
 外板には錆が浮き、疲れている感じでした。

(24系25形+14系10連 青森 2013.12.26)

(24系25形+14系10連 札幌 2013.12.25)


 カーペットカーの車内は、左写真のように2階建てとなっています。
 「座席」はカーペットですからさすがに固いのですが、寝心地は悪くありません。各座席には、毛布と枕、ハンガーがあります。
 1階席は右写真のように、頭の部分のみカーテンで仕切れるようになっています。写真ではわかりにくいのですが、階段下は荷物置き場となっています。
 2階席は、左写真のように個室風となっています。これでも座席扱いで、寝台料金がかからないのでお得な感じです。

 「ドリームカー」の売りは大きくリクライニングするグリーン車用の座席ですが、客室の端にラウンジがあるのも特徴です。
 他の方のブログや実物誌で、しばしば「場末のスナックみたい」と表現されますが、確かにそんな感じです。JR側は高級感を出そうとしたのでしようが、方向性がズレていたようですね。
 うらぶれた外観と異なり、車内はとてもきれいです。かつての国鉄特急型の風格は、十分残っていました。
 「ドリームカー」はかつて、急行「まりも」に連結されていたものの転用ですので、座席はさすがにくたびれています。でも、リクライニングの角度が145度もあり、フットレストも付いていて、快適な寝心地でした。

(2015.7.28)

(2015.7.28)

(24系25形+14系10連 青森 2015.7.28)


 3号車と7号車はスハフ14で、床下のディーゼル発電機が唸っているので自由席車となっていました。デッキには、飲み物の自動販売機があります。かつての北斗星のような、アルコール系飲料はありませんが。
 
 終着駅に着くと、札幌ではそのままDD51に牽引されて入庫します。
 でも、青森は行き止まりなのでED79は切り離されて引き上げ線に入ります。最後尾には代わりにDE10が連結され、逆方向へと入庫することになります。

(24系25形+14系10連 青森 2015.7.28)

(24系25形+14系10連 青森 2015.7.28)

(24系25形+14系12連 青森 2011.12.22)


 「はまなす」の人気は高く、混雑時には12輌編成でも満席となるほどでした。
 でも新幹線が北海道へ延びて、架線電圧が25,000ボルトに昇圧されてしまったため、ED79では牽引できなくなりました。DD51や24系・14系客車の老朽化も進んでいて、継続して使うのは難しくなりました。
 EH800とDF200、そして客車を新製すればよいのですが、経営の苦しいJR北海道には無理な話です。
 その結果、北海道新幹線が開業した2016年3月に廃止されました。乗客がたくさん乗るのに廃止されたのです。
 JR貨物機が牽引し、製造費の安い客車のみ新製すれば残せたはずなのですが。
 新幹線が函館まで伸びても、青森から札幌へ行くには新青森、新函館と2回も乗り換えが必要です。早朝、目的地へ着くことも不可能です。むろん、新幹線は安くありません。
 乗り換えなしで早朝に着き、安価な「はまなす」の需要は、新幹線開業後も変わることはなかったはずです。残念です。
 
 でも最後まで乗客が多く、長大編成の客車列車で、いかにも急行らしい堂々たる姿でした。
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