太平洋石炭販売輸送臨港線@ 2019.3.31更新 実物鉄道へ 表紙へ


 釧路には、霧の街という印象があります。私が訪問したのは3回とも夏、それも盛夏なのですが、気温は低く、いつも霧が立ちこめていました。

 太平洋石炭販売輸送の臨港線は、そんな霧の街を走っていました。貨物専業の珍しい私鉄で、日本で最後に残る炭礦鉄道でもありました。
 石炭輸送は秩父鉄道にも残っていますが、これは燃料用の輸入炭を運んでいるだけです。でも臨港線は、海底炭田とはいえ正真正銘の炭鉱から掘り出した石炭を、港の貯炭場まで運んでいました。

 昼間なのに薄暗い、霧の中を走る石炭列車。あまり知られていませんでしたが、実に独特の雰囲気で、魅力的な路線でした。


                                   (撮影は全て2017.8.5)


 臨港線の前身は、1925年に炭鉱のある春採から港のある知人までを開業させた、釧路臨港鉄道です。その後路線を延長し、エンドレスに近い模型的な路線となりました。終点の城山駅と入船町駅の間は、1.0kmほどしか離れていなかったのです。そして当時は東釧路駅で、根室本線とも接続していました。

 1979年に太平洋石炭販売輸送へ吸収合併され、時代の流れとともに路線も短縮していきました。2019年まで残っていたのは、開業時の春採〜知人間4.0kmのみでした。
 
 そんなわけで、末期はJRなど他路線とは接続しない、独立した路線となっていました。釧路駅からは広大な釧路川を渡った先にあり、徒歩で訪れるのは大変です。私はレンタル自転車で訪問しました。北海道だし海の近くだから平坦だろうと甘く考えていたのですが、起伏があって坂道が多く、かなり体力を必要としました。

 釧路駅から2km少々南下し、海に突き当たると線路がありました。臨港線です。そこから東へ向かい、春採駅を目指します。

 まっすぐ行ける道がないので大回りして3.0km程走ると、踏切があります。渡って右を見ると、おっいたいた、石炭列車です。

(DE601)

 先頭の機関車はDE601という箱形DLです。一見アメリカのDLを思わせるスタイルですが、日本車輌製。アメリカのナローゲージ向け機関車をノックダウン生産したのだそうで、海外には同型車がたくさんいるそうです。1970年製ですが、この時代にしては珍しい電気式のDLです。形式がDEなのは電気式を意味します。

 石炭車はセキ6000形。右写真で下回りに注目してください。連接車です。連接式の貨車は、日本で本形式のみです。全部で14組、28輌あります。

(セキ6017+6018)

(D801+セキ6000形)


 貨車は24輌編成になっています。DLは全部で4輌あり、編成の両端に連結されプッシュプルで運行されています。詳しくは後述しますが、積み込みの関係で2編成を1本につなげた形なのです。全線1閉塞ですので、1編成が往復し、DL2輌と貨車4輌は予備となりますす。

 先ほどの編成も、後端を見たらやはりDLが付いていました。1966年製のD801で、車齢が古いのに番号が大きいのは、新製ではなく廃止された雄別鉄道から来たからです。
 DE601と同じ55t機ですが、スタイルは大きく異なり日本風。国鉄のDD13そっくりです。ボンネット上に「屋根」が付いている点がDD13との違いです。これは石炭の粉塵の吸入を防止するためでしょう。

 春採駅は細長く、ちょうど中間に踏切があります。そこから左右を眺めると、全体が把握できます。
 左下の写真が終点方で、オレンジ色のDLが2輌と機関庫、そして釈奠の積み込み設備の一部が見えます。右上に写っているのは、石炭を運ぶベルトコンベアーです。

 下の写真が知人方です。石炭列車もこうして見ると、長大編成で迫力があります。

 機関区の奥には、除雪用のモーターカーがいます。ラッセル部の目つきが怖いです。

 機関区周辺には、お約束の廃車体。
 左下の2輌はワム80000ですね。臨港線で使っていたとは思えないので、倉庫として払い下げられたものでしょう。

 下写真のDLは一見DD13に見えますが、車体をよく見るといろいろ相違点があります。何より、下回りがロッド式。名取紀之氏の「編集長敬白」によれば、1958年日本車輌製のD101とのことです。

(D701)


 先ほどのオレンジ色のDLを見てみましょう。
 手前がD701です。1977年日本車輌製で、当鉄道の最新鋭機です。といっても、車齢40年を超えていますが。ボンネット側面に、since1977と書かれています。
 これも国鉄のDD13によく似ています。

 写真ではわかりにくい、奥のDLが1964年日本車輌製のD401です。概ね同型機ですが、下回りがロッド式。これが走るところを見てみたいものです。

 さて、少し歩くと石炭を積み込む選炭機や附属建築物が見えてきます。

 左下写真、建物の上部に注目!

 高架線と架線柱が見えますね。
 かつてこの地に張り巡らされていた、600mmゲージの一部です。
 高架線は立派な物で、架線柱の様子から複線だとわかります。
 望遠で撮影したのが下写真。暗いので、明度を上げてあります。
 架線柱にはツタが絡まり、架線は垂れ下がっています。そう、廃線なのです。

 これこそ、現役時代に見てみたかった!

 左写真は石炭を積み込む選炭機です。

 写真ではわかりにくいと思いますが、選炭機の下には、紺色のダンプカーが止まっています。見ていると石炭が落ちてきて積み込まれ、程なく発車していきました。

 ここで産出される石炭は主に火力発電所の燃料になりますが、一部は道内で暖房用に消費されるのだそうです。このダンプカーは、それを運んでいます。

 突然、踏切の警報器が鳴り出しました!
 
 大慌てでカメラを構え、かろうじて撮ったのがこの写真。ブレててごめんなさい。急だったんです。

 そう、石炭の積み込みが始まったのでした。

 長い運炭列車が迫ってきます!
上へ 次へ
inserted by FC2 system