太平洋石炭販売輸送臨港線A 2019.3.31更新 前ページへ 実物鉄道へ 表紙へ


 踏切の警報器が鳴り出すと程なく、D801が牽引する運炭列車が近づいてきました。セキ6000形は24輌の長大編成です。

 列車は1度停車し、すぐに真ん中から分割されました。

 前半の12輌が通り過ぎると、続いて残りの12輌が推進運転でやってきます。D801は元が入れ替え用のDD13ですから当然運転台は横向き1箇所で、DE601も車体は箱形ですが同様です。こんなとき、横向きの運転台は便利なのでしょう。

 2つに分割された各編成は、それぞれ別の積み込み線に入ります。そして上に覆い被さる巨大な選炭機からの石炭を積むわけです。



                                   (撮影は全て2017.8.5)

 DE601の推進運転で後半の編成が走り去り、踏切の遮断機が上がるやいなや、私は即座にカメラをナップザックにしまい、自転車に飛び乗りました。
 そう、沿線に先回りして、走行写真を撮るのです。
 石炭の積み込みが終わり、元の1本の編成に組成されて発車するまで、それなりに時間がかかるはず。実は息子と一緒だったのですが、彼の提案でここに来る途中、海に突き当たったあたりで撮ることになっていました。
 さあ、急げ!
 
 途中は例によってウネウネと曲がる坂道が続きます。自転車はレンタルにしては良い物でしたが、やはり体力は使います。

 ようやく海岸に着いてカメラと三脚を取り出したのですが、困ったことに霧がかなり立ちこめています。まあ、こういう路線だから仕方ない。カメラを三脚に固定して、待つことしばし、何と列車は逆方向、知人方面からやってきました!
 アレ、2編成あったのかな…。でも、知人方に付いているのはまぎれもなくDE601!
 このアメリカ型機関車は日本に1輌しかありません。だから列車は私たちが自転車を漕いでいる間に発車し、知人まで往復していたのです。何とも素早い運用です。
 肝心の写真は薄暗い霧の中で、ご覧のとおり。まあ、列車の長さは表現できましたけど。
 

 ここで少々休憩。次の列車を待ちます。
 天気は悪く、時おり雨がパラつきます。
 先ほどの列車が通ったのは13:06、次の列車が来たのは意外と早く、13:42でした。
 その間、36分。春採まで往復の走行時間を差し引くと、わずか30分足らずで編成を分割して石炭を積み込み、再び編成を1本に戻していることになります。

 さて、滞在できる時間はあと1時間ほどあります。場所を変えて、もう1回撮れそうです。どこで撮るか。
 息子はこの海岸で、もっと近づいて撮るそうです。私は俯瞰して撮りたかったので、先ほど来た道を戻ることにしました。実は途中の坂道で、線路がよく見えたのです。
 

 今度は何とか間に合いました。14:00ちょうど、遠方からやってくる貨物列車を撮影。三脚は間に合わず、カメラは手持ちです。幸い低速なので、何とかなりました。

 落ち着いてから改めて情景を確認すると、線路の両側は湿地帯。その向こう側は川ではなく春採湖です。いかにも釧路らしい場所ですね。手前の道路が邪魔ですが、これは春採駅からここまでの道の一部なので、無いと困ります。

 少し場所を移動すると、春採駅に到着した列車がよく見えます。この後はどうなるのでしょう。まだ走るのかな。動いてほしいな。

 祈りが通じたのかどうか、やがて列車は載炭のため、選炭機へと向かって行きました。さあ、元の撮影地点へ戻りましょう。

 その後は、1往復した列車をバシャバシャ撮りました。

 相変わらず雨混じりの曇天で暗く、霧が立ちこめる悪条件。しかも私は明るいズームレンズを持っていないので、こんな写真しか撮れません。
 でもまあ、素人だから仕方ない。珍しい運炭列車を見て、撮影もできたのです。自分では十分満足し、息子との集合地点へ向かいました。

 8月初めとは思えない、肌寒い気候。雨天とはいえ薄暗い街。立ちこめる霧。
 釧路の自然は厳しいのです。
 青いDD13も、アメリカ型のDLも、この情景に不思議と似合っていました。そして真っ黒な石炭列車も。
 昔の炭礦鉄道のように山間部は走らないものの、周囲の地形は起伏が多く変化に富んでいました。
 臨港線というだけあり、路線の半分は海沿いです。臨海鉄道ではなく、昔の臨港鉄道の雰囲気がそのまま残っていて、いい感じでした。

 皆様はご存じのことと思いますが、昔はこのような私鉄の臨港鉄道が各地にありました。その一部は旅客営業もしていて、この臨港線も釧路臨港鉄道時代の1963年まではディーゼルカーが走っていました。でもその後、臨港鉄道は続々と廃止され、今残るのは第3セクターの臨海鉄道だけです。第3セクター化されて福島臨海鉄道になった小名浜臨港鉄道や、旅客専業の紀州鉄道になった御坊臨港鉄道などを除けば、もう残っていません。
 ここはかつての臨港鉄道のように一般貨物や工業製品は運びませんでしたが、セキが石炭を運んでいるので魅力は十分でした。
 地元の方以外、気軽に訪れることのできる場所ではなく、貨物専業の地味な鉄道です。でも個性的で独特の雰囲気。時間をかけて訪問する価値のある鉄道でした。

 でも2019年3月末、残念ながら運行を休止し、私の再訪はかないませんでした。
 
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