秘境駅 その2(飯田線) 2016.9.18新設 前ページへ 表紙へ

(田本 2016.8.19)


 本州中部を縦断するJR飯田線には、秘境駅がたくさんあります。
 とりわけ天竜峡〜中部天竜間は、秘境駅でない駅が珍しいくらいです。
 もともと人口密度が希薄な渓谷沿いという立地に加え、ダム建設に伴う集落の移転も重なり、このようになりました。
 この区間の線路は、天竜川沿いの断崖に敷かれ、険しい地形を連続するトンネルで抜けていきます。
 そのうち、特に魅力的な3駅をご紹介します。
 いずれも静かな山間部にあり、大自然を満喫できます。
飯田線・田本 (2016.8.19)

↑左はそのまま天竜川。


 田本駅は、2つのトンネルにはさまれた、僅かな地上区間にある駅です。
 断崖絶壁の途中、張り付くように線路と狭いホームがあり、飯田方には小さな待合室が建っています。
 周囲に人家は皆無。というより、人家を建てられる平地がありません。
 駅の出口は豊橋方に1ヵ所あるだけで、その先はトンネル脇を急な階段で上ります。
 階段を上りきると右折してトンネルポータルの上を通り、その先は山道です。
 未舗装のか細い山道は、自動車はおろかバイクも通れません。
 つまりこの駅には、徒歩で来るしかないのです。
 断崖絶壁のはるか上には中学校があるのですが、そこへ行くにはやはりその山道を延々と登るしかありません。
 待合室には「緊急時避難指定場所」として中学校への地図が掲示されていますが、約2kmで徒歩約30分とのこと。避難するのも大変そうです。
 

↑待合室の中はきれい。

↑「緊急時避難指定場所」の掲示。

↑飯田方には小さな待合室。その先はトンネル。

↑豊橋方もすぐにトンネル。

↑ホームからの唯一の出口。

↑こ、この階段を上るのか…。

↑急な階段を上りきると右折。

↑駅前通りです。

↑少し進むと道は二手に分かれます。

↑左の道は曲がりくねり、急坂を上っていきます。もはや登山道です。

↑右の道は路肩が崩壊。ひぇー。

飯田線・金野 (2016.8.19)

↑ここも断崖。左は天竜川の支流、米川(よねかわ)。


 金野と書いて「きんの」と読みます。
 この駅も田本駅同様、川沿いの断崖絶壁にあります。
 片面ホーム1本に小さな待合室が建っているのも同じです。
 人家はやはりゼロ。
 でも駅前に車道が来ているので、車で来ることができます。
 実際、駅ノートを読むと車で来た方の書き込みも散見されますが、いずれも「とても怖かった」という意味のことが書いてあります。
 無理もない。車道といっても自動車1台がやっと通れる細い道で、急勾配と急カーブの連続です。もし対向車が来たら(たぶん来ないけど)離合できません。下手をすれば谷底へ転落します。
 駅前には僅かな広場と、崩れかけた自転車置き場があるのみ。車道があるとはいえ、この駅に自転車で来る人はいるのでしょうか。
 駅周囲はやはり静かで、癒やされます。
 当駅の待合室にも「緊急時避難指定場所」として小学校への地図が掲示されていますが、約6.2kmで徒歩約1時間50分とのこと。避難する途中で遭難しそうです。

 駅前の道を歩いて橋を渡り、対岸から眺めて仰天。駅の真上は巨大な岩山です。
 しかもその岩山の上部は、オーバーハングしているように見えるのです。
 駅に戻り、待合室から目の前の断崖を見上げると、はるか上方にはゴツゴツした岩肌がせり出しています。
 ひえぇ〜っ!
 今もし大地震があったら、いや何もなくたって、巨大な岩が落ちてくるかも。
 元は中小私鉄が開業した区間ですから、こんな大胆な線路の敷き方をしたのでしょうね。 

↑写真中央が駅の出口です。

↑20台くらい置けそうな自転車置き場。右が車道。

↑車道は右折して川を渡る。

↑「よねかわばし」

↑橋から見た米川。この先で天竜川と合流している。

↑山肌に沿って上る細い道。

↑右の木々の間から川越しに駅が見えた。

↑「緊急時避難指定場所」の掲示。

↑駅に戻り待合室から上を見上げると…。

↑その下を電車は平然と走る。

飯田線・小和田 (2016.8.19)

↑年季の入った木造駅舎。


 小和田と書いて「こわだ」と読みます。
 長野県と愛知県、静岡県の県境にあります。
 その昔、三信鉄道時代に終点だった時期もあり、相対式ホームを持つ有人駅でした。
 その後、無人駅となって久しく、2番線の線路も撤去されてしまいました。
 でも味わい深い木造の駅本屋は残り、実にいい感じです。
 ここも周囲に人家は無く、廃屋のみ。
 車道も通っていませんから、車で来ることはできません。
 ホームの背後には、天竜川が悠然と流れています。

↑駅本屋の内部。木製の窓枠がすばらしい。

↑有人駅時代の面影がしっかり残っています。

↑ホームの背後には天竜川が見える。

↑線路が撤去された2番線。

↑駅前広場。

↑駅前通り。坂を下ると東屋がある。

↑駅本屋の壁面に掲げられた駅名標。

↑駅の周囲は山また山。

↑谷間は日が落ちるのが早い。

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