西武鉄道山口線1976 実物鉄道へ
 1976年、私が初めて乗車したナローゲージ鉄道が、西武鉄道山口線でした。
 現在は新交通システムになってしまいましたが、当時は762mmゲージの軽便鉄道で、バッテリー機関車が引く「おとぎ電車」とともに、2輌の蒸気機関車が使用されていました。
 私が訪問した時、稼働していたのは左写真のBタンク機。元・井笠鉄道の1号蒸機です。牽引しているのは、やはり井笠鉄道から来た木造客車。こんな列車が東京都内を毎日走っていたのですから、今から思えば夢のような話です。
 沿線風景もなかなかで、開けた風景こそ無いものの、木立の中を抜けていく小さな列車は実にのどかでした。
 途中駅はありませんでしたが、列車交換のための信号所が2カ所ありました。

 写真はいずれも、当時小学生だった私が撮影した物です。

   (ユネスコ村付近にて)

 初めて乗車、と言えば、私が蒸機牽引の列車に乗ったのも、木造客車の乗車経験も初めてでした。キャブの中に積まれた石炭に触ったのも、この時が最初です。ゴツゴツして、ひんやりとした感触は、今でも鮮明に覚えています。
 1号蒸機のキャブ後方には、右写真の通り何故か「信玄号」というプレートが付けられていました。もう1輌の蒸機は頸城鉄道の2号機でしたが、こちらは「謙信号」でした。

   (西武遊園地)


 ナローとはいえ本物ですから、走り出すと左写真の通りすさまじい蒸気を噴き出します。
 右写真は車庫。一番右と左から二番目がバッテリー機関車で、その間の2輌が井笠鉄道の木造客車。一番左が「おとぎ電車」用のオープン客車です。
 オープン客車の台車は、何と旧日本陸軍鉄道聯隊の97式軽貨車でした。

   (西武遊園地〜中峯信号所)

 当時の西武鉄道山口線は、地方の軽便鉄道をそのまま再現したような路線でした。
 私も、蒸機時代の井笠鉄道の列車を、実際に乗車して体験することができたのです。
 私は今でも軽便鉄道が大好きで、特に蒸機牽引の木造客車に限りない魅力を感じますが、その原点はやはりこの時の体験だったのでしょう。
 少々色あせた左の写真一枚だけで、蒸機の振動や騒音、煙のにおい、アーチバー台車の固い揺れ、木造車体のきしむ音などが、脳裏によみがえってきます。
 そしてそれは、実物誌などで昔の軽便鉄道の写真を見た時に、「この列車はこんな感じだったのだろうなぁ」と理解する手がかりにもなっているのです。
 いつの日か、そうした軽便ムードを上手に取り入れたレイアウトを作ってみたいものです。

   (ユネスコ村)
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