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(キハ37-1003+キハ38-1001 馬来田 2009.3.25)


 久留里線に初めて乗ったのがいつなのか、記憶がはっきりしません。そのくらい印象の薄い、平凡なローカル線でした。走っているのは当時どこにでもいたキハ30。沿線風景も、これといった特徴はありません。
 でも2012年までは、JR線上で唯一、30系気動車が走っている路線でした。
 古くからのキハ30に加え、キハ37とキハ38も走っていました。キハ37は国鉄末期に5輌新製され、うち3輌が配置された車輌。西日本に配置された2輌が廃車になった後も、しぶとく残っていました。キハ38は八高線用に新製され、電化によって転属してきた車輌。どちらも全くの新車ではなく、台車などは廃車発生品を流用しています。
 木更津周辺は宅地化が進み、朝夕はそれなりに混雑するので通勤型気動車本来の活躍ができていましたが、日中はガラガラ。やはりクロスシート車が欲しいところです。


    

(キハ30-98 木更津 2009.3.25)
 


 河田耕一氏の名著『シーナリィ・ガイド』では、久留里線終点の上総亀山が、「草深い行き止まり駅」として紹介されています。その写真に写っているのは30系気動車です。
 そして何と2012年まで、キハ30が走っていました。

 私は30系気動車はあまり好きではありません。その昔、国鉄のローカル線で列車を待っていて30系が来るとがっかりしたものですし、今でも機能一点張りのあの姿に魅力は感じません。でも、JR線上で見られるのはここだけになると、やはり感慨はありました。
 もっとも、この派手な塗装は、キハ30には似合っていませんでしたが。
 

(キハ30・35・36 木更津 1976)


 左は国鉄時代の写真。
 小学生の時、房総半島を一周した際に撮影しました。
 国鉄車輌に似合うのは、何といっても国鉄色です。特に気動車は、このツートンカラーが実によく似合っていました。
 馬子にも衣装、30系気動車も国鉄色なら落ち着いた雰囲気になります。緑の多い沿線風景にも、よく似合っていました。木立や水田に映えるのは、寒色ではなく暖色なのです。
 右はJRになってからの写真ですが、首都圏色だった頃です。
 

(キハ30−3 木更津 1998)


(キハ30ー62 木更津 2012.11.18)



 引退が迫った2009年秋以降、3輌のキハ30は全車国鉄色へ戻りました。
 やはりいい感じです。
 国鉄色のキハ30が来ると、明らかにマニアではない普通の乗客も、カメラやスマートフォンを向けていました。

(キハ38+キハ37+キハ38 木更津 2009.3.25)


 平日の朝は、通勤通学用に4輌編成が走っています。
 2009年頃までは、5輌編成も走っていました。左写真は、5輌編成の上り列車が木更津に到着し、2輌を切り離した直後の光景です。
 このくらいの乗客があるからJRの路線として現存しているわけですが、本来つながるはずだった木原線は、第三セクターとなってしまいました。

 右は機関庫。外板を張り替えたので新しく見えますが、本来は蒸機時代からの木造庫で、3線式の大きなものです。
    

(キハ38 木更津 2009.3.25)


 河田耕一氏が上総亀山を訪れたのは1963年のことですから、およそ半世紀前になります。
 でも、駅構内は配線や駅本屋を含め、ほとんど変わっていません。キハ30が来れば、車輌も同じでした。


(キハ37-1002+キハ38-3 2009.3.25 上総亀山)



(キハ37-1002+キハ38-3 2009.3.25 上総亀山)




 上総亀山駅の駅本屋と駅前風景。
 『シーナリィ・ガイド』をお持ちの方は、P.76〜77をご覧下さい。
 お隣の小湊鐵道と同様に、時間が止まったような駅です。
 2012年までは有人駅でしたが、現在はポイントが撤去され、無人駅になってしまいました。

(2009.3.25 上総亀山)



(2009.3.25 上総亀山)



(1998)


 左はキハ37、右はキハ38の車内。
 どちらもロングシートです。キハ30も、もちろん同じです。
 通勤通学客がそれなりに多く、沿線に目立った観光地も無いのでロングシート車で良しということなのでしようが、のどかな沿線風景を見ると、やはり惜しい気がします。
 代替に投入されたキハE130もロングシート車ですが、本来はセミクロスなのですから、そのままにしてほしかったのにと思います。

(1998)

(キハ37ー2 久留里 2012.11.18)


 ロングシート車ばかりの久留里線にも、例外がありました。
 キハ37とキハ38の基本番台には、トイレが付いています。その前の部分は、当然ボックスシートなのです。
 以前はトイレの前ということで避けていたのですが、トイレが使用停止になって以来、積極的に座るようになりました。やはり国鉄型のボックスシートに座ると、旅情を感じました。
 くどいようですが、キハE130にも少しくらいあっても良いのではと思います。

(キハ37ー2 久留里 2012.11.18)


 こちらはちょっと変わり種。
 イベント列車「のんびりくるり号」として、久留里線を走った旧型客車です。
 DE10のプッシュプルで、木更津から久留里まで2日間往復しました。
 写真は、前日の試運転時の入替風景です。
 
 
 (DE10+旧客+DE10 2009.3.19 木更津)
(DE10+旧客+DE10 2009.3.19 木更津)

(1998 上総亀山)


 窓口で切符を買い、改札口を抜けて線路を渡り、ホームへの階段を上る…。かつては当たり前だったのに、今では経験することが難しくなりました。

 久留里線は首都圏のJR線でありながら、近年まで変わらなかった貴重な路線でした。

 腕木式信号機やタブレットも、比較的最近まで現役でした。

(キハ30ー100+キハ38 下郡 2012.11.18)


 30系気動車も引退しました。『シーナリィ・ガイド』の時代から変わらない光景も、もう見ることができません。

 でも、近代化は仕方のないこと。久留里線自体は、今後もずっと残ってほしいと思います。
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