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(キハ52-115 小滝  2009.7.20)


 車窓から日本アルプスを眺められる大糸線は、日本でも有数の、風光明媚な路線です。
 松本から南小谷までは電化されていて、かつては旧型国電、現在は主にE127系が走ります。
 でも南小谷〜糸魚川間は、トンネル断面が小さく非電化のまま。2010年3月までは、キハ52が走る日本で最後の路線でした。
 この区間は35kmほどありますが、僅か3輌のキハ52で全ての運用をまかなっていました。
 以前は、いわゆる「新塗装(越美北線色)」でしたが、嬉しいことに末期は全車、国鉄色に塗装されていました。
 左写真のキハ52-115は、国鉄の一般型気動車色。緑の豊かな沿線風景に、実に美しく映える色です。
 車輌自体も、冷房化やワンマン化、トイレの撤去、前照灯の2灯化、方向幕の設置など改造はされているものの、原型をよくとどめていて、その点でも貴重な存在でした。

(キハ52-115 中土〜南小谷 2009.7.20) 
 


 

 大糸線のキハ52は、ほぽ全区間、姫川に沿って走っていました。
 姫川は、名前は優雅ですが、増水時はゴゴゴゴゴと地響きを立てて激しい流れとなります。そのため、過去に何度か災害に遭い、長期間不通になったこともありました。
 これが地方私鉄ならとっくに廃線となっていたでしょうが、大企業JR西日本の一路線ということで、無事復旧して現在に至ります。
 今でも、車窓を眺めていると、この路線を維持する保守作業の大変さと、膨大な費用とが容易に想像でき、自然と闘いながら鉄道を支えている方々の努力に頭の下がる思いです。
 でも、趣味的に見れば、山の斜面を川に沿って走る光景は実に魅力的。
 遠い昔、機芸出版社刊『レイアウトテクニック』巻頭のカラーグラフで見て憧れた、荒崎義徳氏製作の「雲竜寺鉄道祖山線」を連想する風景です。

(キハ52-115 南小谷 2009.7.20)


 20系気動車は、30系気動車や急行型気動車と並び、国鉄の非電化線区ではどこへ行っても見られる存在でした。それどころか、地方私鉄にも同型車や準同型車がたくさん走っていました。
 でも、JR線上で最後に残ったのはこの3輌のみ。時代の流れとはいえ、寂しさを感じます。
 でもこの3輌、車齢は40年を超えていても機関2台搭載のおかげで加速が良く、山岳路線を軽快に走っていました。
 まだしばらくは使えそうに見えたので、もっと走り続けてほしかったのですが。

(南小谷 2009.7.20)

(キハ52-156 小滝〜根知 2009.7.20)


 写真のキハ52-156は、朱色一色の「首都圏色」に塗られています。
 この塗装もまあ懐かしい色ではありますが、やはり一般型気動車色の方が美しさは数段上です。
 もともとは塗装作業の簡略化のための色なので、車体形状や沿線風景とは合っていないのでしょう。

(キハ52-156 糸魚川2009.7.20)

(681系・419系・キハ52-156 糸魚川 2009.7.20)


 大糸線は、終点の糸魚川で北陸本線と接続しています。
 その北陸本線も、魅力的な車輌が揃っています。
 時間帯によっては、キハ52が国鉄型電車と並ぶシーンを見ることもできました。
 午前10:36頃には、ご覧のような光景も出現しました。左は越後湯沢行きの681系特急「はくたか」、真ん中が583系改造の珍車419系、そして右がキハ52と並んでいます。
 この光景も過去のものとなりましたが、模型心を大いにくすぐられます。
 いつの日か、レイアウトに取り入れたい情景です。

(E127系2連 信濃大町 2011.11.27)


 大糸線の大半は電化区間ですが、ここの主力のE127系はいかにも安っぽい電車で、どうも好きになれません。車体に個性が無く、ステンレス車体に寒色系の帯を巻いた塗装は、沿線風景とまるで似合っていないのです。
 普通列車用とはいえ、観光客が多い路線ですから、もう一工夫あっても良かったと思います。

(E127系2連 穂高 2011.11.27)

(E257系9連 白馬 2009.7.20)


 大糸線には、E257系特急「あずさ」も走ります。
 もっとも当ページは普通列車がテーマなので、写真は夜行快速「ムーンライト信州91号」として走った時のものです。
 通常は国鉄型の183系が使用されますが、多客時はE257系になり、グリーン車も付きます。
 大糸線は、首都圏から行くととても遠く、早朝の特急「あずさ」でも、南小谷に着くのは昼近くになってしまいますが、「ムーンライト信州」なら早朝6:30頃には到着し、一日が有効に使えます。
 また、車内は清潔で乗り心地も良く、青春18きっぷの通用期間なら極めて安価です。
 難点は、臨時列車なので運転日が少ないこと。乗客はいつも多いようなので、運転日を増やしてほしいものです。
 

(キハ48形2連 信濃大町 2011.11.27)


 大糸線は観光路線なので、珍しい列車が臨時に走ったりします。
 左写真は快速「北アルプス風っこ号」です。JR東日本の「ビュースター風っこ」を使用し、松本から信濃大町まで1日に2往復しました。
 雄大な風景の大糸線に、「トロッコ列車」はベストマッチ・・・・・・のはずだったのですが、運転したのが11月末とあっては季節外れ。ガラス窓が全てはめ込まれ、開けられないので「風っこ」といっても風を感じられません。側窓は大きくても保護棒が邪魔で北アルプスの眺望も今ひとつ。元がキハ48なので、前面展望も良くありません。乗客も少数でした。
 余談ですが、国鉄型が好きな私も、国鉄末期に製造された車輌の前面展望の悪さには閉口します。
 この列車は夏の暑いときに、南小谷から北の非電化区間を走らせるべきだと思います。そこはJR西日本の路線ではありますが。

 20系気動車は、私の好きな車輌の1つです。
 やや貧弱な10系気動車より見た目に余裕を感じますし、座席の座り心地も上でした。
 30系気動車より曲線が多く、スタイルにまとまりがあります。
 JRの新型気動車のように機能重視ではなく、暖かみも感じます。
 何の飾りもない平凡な車体。旧式なDMH17H機関の重々しいアイドリング音。落ち着きのある走り。よく似合った塗装。
 日本全国を走っていた20系気動車も、JR線上ではこの3輌を最後に、全廃されました。あとは、ひたちなか海浜鉄道と水島臨海鉄道に残っているだけで、それも脇役となっています。
 美しい大自然の中を走る大糸線は、20系気動車にとっての最後の晴れ舞台でした。
 去りゆくキハ52を眺めながら、旧友と別れるような感覚に襲われました。
 でも、また会いに来たい。そんな風にも強く思いました。

(キハ52-115 小滝〜根知 2009.7.20)

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