無人駅 2016.8.16更新 前ページへ 表紙へ

 立派な駅本屋が建ち、ポイントもある駅が無人化されてしまう昨今ですが、無人駅といえばやはり、短いホームに質素な待合室があるだけ、という方がそれらしくて良いと思います。
 レイアウトなら、ウェザリングを効かせて古びた感じとし、アクセサリィ類はあまり置かない方が良いでしょう。もちろん、乗客も少なめに。
小湊鐵道・上総川間 (2015.5.4)

 水田のど真ん中にある無人駅。駅というより、停留所ですね。
 開業当初の駅ではなく、後に近くの丘の上へ高校ができたため設置されました。学校はやがて特別支援学校となって校名も変わりましたが今もあり、利用客のほとんどは通学生です。
 古枕木を組んで土を盛ったホーム上の木製駅名標は傾き、周囲にはやはり古枕木製の柵がめぐります。小さな待合室のそばには、今時珍しい木製電柱が立っています。
 さすがにホーム上は舗装されていますが、こうして見るとわからず、半世紀前の写真だと言っても通用してしまうでしょう。
 駅の周りに人家はなく、手前の街灯は金属製ですが、すっかり錆び付いています。
 それでも荒廃してはおらず、清掃は行き届き、植木はきれいに刈り込まれています。
 
 ホーム上の待合室は、木造トタン張りの簡素なもの。
  待合室の裏は、左写真のとおり。入り口の右上に駅名を書いた板が貼ってありますが、これはなかなか味のある物です。、
 中から駅前を見たのが右写真。僅かな駅前広場の先は農道が横切り、その向こうは水田。 人家ははるか彼方です。
 もともとは、その向こうの丘の上に高校ができたので開設された駅でした。
 少子化が進む中、高校は統合されてしまいましたが、学校は特別支援学校となって健在です。つまりこの駅の使命は、まだ続いているのです。
小湊鐵道・上総大久保 (2014.11.23)

 同じ小湊鐵道の無人駅でも、上総大久保駅は山間部にあり雰囲気はまるで違います。山の中の準秘境駅、という感じです。
 過疎化が進んだことで、平凡な無人駅が秘境駅になりつつある、というところでしょうか。
 かつては駅前に立派な農業倉庫が建ち、ホームから線路をはさんだ向こう側の丘の上には小学校もありました。
 でも現在、農業倉庫はなく、小学校も廃校になってしまい、人家も見えません。
 実は、駅を出てすぐの道を下っていくと、大久保の集落があります。県道が通り、郵便局もあるのですが、駅からは見えないのです。
 周囲はとても静かで、秘境度は高いと思います。
 片面のホーム上には、好ましい待合室が建っています。他の無人駅より大きめなのは、観光客を意識しているのでしょう。ここは大福山を経由し、養老渓谷へ向かうハイキングコースの出発地にもなっていますので。
 観光客を意識した物は他にもあり、待合室を出ると電話ボックスがあり、その向こうには真新しい立派な建物が建っています。これは何とトイレで、この写真を撮る少し前に建てられました。
 もっとも、駅の利用客は1日平均10名弱だそうで、このトイレもどの程度使われているのやら。
 観光シーズン以外は通学の小学生が若干乗り降りする程度で、閑散としています。
 

 待合室を出ると、ハイキングコースを説明するきれいな看板が立っています。
 レイアウトでも山の中に駅を作るなら、たとえ無人駅でもこの看板は必要ですね。
 「ウチのレイアウトに、大した観光地はないから」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、なぁに、大福山だって養老渓谷だって、大した観光地じゃないですよ。
 待合室の壁には、シュロ箒が4本も下がっています。そのおかげか、駅はとてもきれいです。
 
 新しいトイレの隣には、古いトイレと、さらに古いトイレが建っています。
 利用客10名足らずの無人駅にトイレが3つとは、不思議な光景です。

↑新しいトイレの隣に並ぶ、古いトイレ

上信電鉄・千平 (2015.9.5)

 上州平野を走る上信電鉄も、終点近くなると山間に入ります。特に終点の下仁田から、一つ手前の千平の間は山岳路線のようです。
 その千平は、ご覧の通りホーム一本の無人駅。
 でも上記の上総川間と異なり、平地ではないのでだいぶ印象が違います。
 小レイアウトでもこんな駅を作れば、立体感があって面白いのではないでしょうか。
 駅は道路から高い位置にあり、階段を上ってホームに出ます。待合室裏の巨木が、いいアクセントとなっています。その下は、丁寧に積まれた石垣です。
 駅の手前には小さな鉄橋があり、一段低い道路橋とともに沢を渡っています。
 狭いスペースに変化に富んだ地形があるところは、レイアウトに取り入れると面白そうですね。

 ホーム上はアスファルトで舗装されていますが、電車の止まらない端の部分は未舗装のままです。
 待合室は、やはり簡素な作りです。
留萌本線・阿分 (2015.7.25)

 気動車1輌分にも満たない板張りのホーム上には、待合室さえなし。かつては駅ではなく仮乗降場だったそうで、なるほどと納得させられます。
 仮乗降場は国鉄時代に、正式な駅ではないものの周辺住民の利便のために設置された乗り場で、とりわけ北海道には多数ありました。JR化の際に駅へ昇格したのですが、実態はご覧の通り。乗降場時代とほとんど変わっていません。とても21世紀とは思えない情景です。
 河田耕一著『シーナリィガイド』に「一本松仮乗降場」が載っていて、「昔はこんな駅があったのか」と衝撃を受けた記憶がありますが、その写真とそっくりです。
 レイアウトに2つめの駅を設置する場合や、小レイアウトの場合はこんな駅が似合うのでは。
 ある程度の大きさのレイアウトでも、こんな小さな駅を作ると全体を広々と見せる効果があると思います。
大井川鉄道・塩郷 (2011.8.1)

 広大な大井川に面した、ホーム一本の無人駅。
 実に雄大な情景ですが、川を手前に持ってきて、水面のごく一部だけを作るようにすればレイアウトでも不可能ではありません。
 駅の背後は道路を隔てて垂直の崖。このまま作れば意外とスペースをとらずに済みそうです。
 右下写真で、電車の背後に吊橋が写っているのにお気づきでしょうか。塩郷の吊橋として知られる、久野脇橋です。
 吊橋も、立体感を出す上で有効なストラクチャーですね。
 左写真と左下写真は、その吊橋上から撮影したものです。
銚子電気鉄道・本銚子 (2016.8.16)

 宮下洋一氏の傑作ジオラマ「少年の夏」の題材となったのが、銚子電気鉄道の本銚子駅です。
 同ジオラマをご覧になった方には一目瞭然ですが、ホーム上の駅本屋はよく似ています。
 ご覧になったことのない方には、宮下氏の著作『地鉄電車慕情』(ネコ・パブリッシング刊)をおすすめします。
 この駅にはやはり、夏が似合うようです。夏の日差しを受け、勢いのある植物に埋もれてしまいそうな駅です。
 宮下氏の作品では山田石橋駅という有人駅になっていますが、本銚子駅もかつては有人駅でした。
 今でもその面影は十分残っています。
 駅前は、今時珍しく未舗装。
 駅本屋の向かって左側に隣接してた自動販売機は移設され、雰囲気が良くなりました。
 自転車が並んでいるところも、乗客の姿を想像できていい感じです。
 

↑有人駅時代の出札口や、改札のラッチが残る。


 ホームの外川寄りには陸橋が架かっています。
 その上からは、右写真のように電車を間近で俯瞰することができます。
 よくできた模型を眺めているような気になります。

↑陸橋上より。(2009.12.30)

↑ホーム上にはこんな電灯も。

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