C建物の製作(その2)  前ページへ 表紙へ

 本作品のように、細長い板を下から少しずつ重なるように貼って作る壁を、下見板張りと言います。これは板のつなぎ目から雨水が入らない工夫です。ちなみに板を縦に貼る羽目板張りの場合は、つなぎ目に目板と称する細い板を上から貼って、雨水を防ぎます。

 さて、私は下見板を、エコーモデルのSTウッドを使用して作っています。いさみや製のウッドペーパーでも構いません。いずれも極薄の紙を同様の桐板でサンドイッチした物で、厚さが0.3mmしかなく、ほぼスケール通りの下見板になります。経年変化にも強く、30年以上前に購入したSTウッドも歪みやソリが全くありません。

 このSTウッドに5.0mm間隔でケガキ線を引き、カッターナイフで大量に切っておきます。そして前ページで記した「角材チョッパーU」で所定の長さに切断し、4.0mm間隔の線に沿って下から貼っていくのです。1.0mm分は重なるわけです。この時、ケガキ線が出ないよう、裏返しにして貼ります。接着剤は、木工用ボンドを使用しています。両面テープを使う手もありますが、強力すぎて貼り直しが利かないので、私は使っていません。なお、私は4.0mm幅の下見張りとしたのでいちいち切りましたが、2.0mm幅や2.5mm幅なら、エコーモデルから切断済のSTウッドと台紙をセットにした製品が発売されています。

 下見板の長さは、前ページに記した柱や窓枠に、1/3くらいかかる寸法で切断します。例えば柱間が21mmなら、22mmの長さにするのです。
 このように実物同様に板を貼って下見板張りを表現する技法は、荒崎良徳氏が「雲竜寺鉄道祖山線」で発表なさったやり方ですが、手間はかかるものの実感的にできるので、私はいつも使っています。

 他にもっと簡単に下見板張りを表現する技法もありますし、輸入物の下見板張り板材を使えば何の手間もかかりません。ただ、それではあまりに整然と整った壁になってしまいます。実物の古い日本建築は、どこも微妙に歪んでおり、それが温もりを生み出しているように思いますので、やはり1枚ずつ貼りたいものです。また、下見板がズレたり割れたり、部分的に新しい物へ張り替えられたりしていることもあり、それらはこの技法でないと表現できません。

 今回の作品は、比較的新しくて手入れの行き届いている商店という想定なので、そのあたりは控えめにしましたが、右写真の隣家に面した側の壁には、ズレたり割れた下見板も何ヵ所か入れました。
 実物の写真を左に載せましたが、人が住んでいる現役の住居でも、このように下見板がズレたり割れたりしている場合が珍しくありません。

 むろんこのままでは雨水が入ってしまうので、いずれ新しい板に交換することになります。こうして部分的に直すのが簡単なのが下見板張りの特徴でもあります。模型でも、部分的に色の違う板を張り、張り替えを表現すると変化がつくので、レイアウト「上総鉄道」ではいくつかの建物に取り入れました。

 その他、写真のようにツタをからませても面白く、今回のジオラマでも住居はやりませんでしたが資材置き場の壁に取り入れました。詳しくは後述します。

 下見板を張り終えたら、その上に縦に「押し縁」を張ります。羽目板張りの目板はつなぎ目の防水が目的ですが、下見板張りの場合はそれこそ「ズレたり割れたり」しないよう、押さえるための細い板です。これは下見板が2.0mm幅や2.5mm幅の場合は不要です。今回のように幅の広い下見板のみ必要な物です。

 まず下見板に、押し縁を貼るためのケガキ線を書き入れます。スケールでは5.5mm間隔ですが、模型では若干広い方がバランス良く見えるようです。そして裏に両面テープを貼ったSTウッドを0.3mm幅に切り、両面テープの台紙をピンセットではがしてから、ケガキ線に沿って貼ります。この時、小型のステンレススケールを添えて曲がらないように気をつけます。その後これを、所定の長さに切るわけです。

 下見板の端には、押し縁と同様の「見切り縁」が付きます。

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